Rental Honeymoon 5


オレを守るだと!

笑わせんな!百万年早え!


浮かんだ言葉はたしぎの瞳の前に
発せられることもなく、飲み込まれた。

胸の傷の奥がギュッと掴まれたように熱くなる。
たしぎの指先が手に触れた時、
この胸に引き寄せたいという衝動を 抑えるのに必死だった。


ベッドに寝転がり、目を閉じると、
たしぎの真っ直ぐな瞳ばかり浮かんでくる。

なんてこと言い出すんだ。
驚かせやがって・・・

真顔で、オレを守るなんて言うヤツは、あいつぐらいだ。


ふっと、身体の力が抜けて、
いつの間にか、笑うように眠っていた。



******


たしぎは、キッチンで夕食を作っていた。


「お前がオレを守るだと?笑わせんな。」


当然、帰ってくると思っていた言葉はなく、
驚いたように見つめ返すロロノアの顔だけが胸に焼き付いていた。

怒ったんだろうか。


馬鹿にされると思ったが、言わずにはいられなかった。


わたしにだって、守りたいものがある。
どんなに笑われようと、この手で守りたいものが。

いけませんか。

あなたをも守れるほどに、強くなりたい。



ぐるぐると巡る思考の中、
予想以上に夕食が上手く出来た。


テーブルに盛り付けた料理を、たしぎは、満足そうに眺めた。



*****


そっと、寝室に足を踏み入れると、
ゾロは、背を向けて寝息をたてている。

「ロロノア・・・」
声をかけようとして思いとどまる。

たしぎは、上から覗き込むように顔を近づけた。

なんて、無防備な寝顔。

これが魔獣と恐れられた、海賊狩りの男の顔なんて。
そういえば、私、年上でした。

自然とたしぎの顔が緩む。

こんな、あどけない顔で・・・


しばらく時が経つのも忘れ、眺めていた。



もう一度、「ロロノア。」と声をかけると、
ゾロが、弾かれたように飛び起きた。

「どぅあっ!!!なっ、なんだ、急に!」
飛び退いて、振り向くと、口をパクパクさせて、抗議する。

「てめぇ、寝込みを襲うなんざ、卑怯だろっ!」

「襲ってなんかいません。時雨だって、抜いてないんですから!」

「そういう意味じゃなくてっ!」
胸を押さえながら、大きく肩で息をする。


「そう、夕食出来ましたよ。冷めないうちに、どうぞ。」
にこりと笑うと立ち上がって、寝室を出ていく。


たしぎは、あの寝顔は自分の胸にしまっておこうと思った。


後に残ったゾロは、たしぎの後ろ姿を見つめたまま、
こいつの方が、よっぽど厄介だと、感じていた。



〈続〉